CAATs事例:労務監査
労務監査を対象にCAATsの事例を紹介したいと思います。
ある企業では、勤怠管理システムを利用して出退勤打刻を行って勤怠管理をしていましたが、退勤打刻をしたにもかかわらず、実際は退勤せずに仕事をしている従業員がいるとの情報がありました。
この場合、結果として会社は「36協定」違反となってしまう他、従業員の健康被害リスクや残業代の未払いリスクが顕在化する恐れがあります。
そこで監査部門では、勤務実態を把握するためにどのようにすれば効果的かつ効率的に監査を実施できるか悩まれていました。
上記の悩みに対応すべく、労務監査で必要となる各種データを特定し、異常な兆候を示す従業員や異常な兆候を示す従業員が比較的多い部署を特定しました。
<リスクの識別>
実際に稼働した時間(実労働時間)が、正確にシステム(勤怠管理システム)に登録されておらず、実態としてサービス残業が発生しているにも関わらず、発見することができないリスクを識別しました。
<立案した監査手続>
ほとんどの従業員がPCを使って業務を行うため、PCの操作ログから実労働時間を把握して、勤怠管理システム上の打刻データとの乖離を検出する手続を立案しました。
<関連するシステムやデータの現状>
データ分析による検証手続の立案段階で、以下の通り、労務監査で必要となるデータの現状を把握しました。
・ 勤怠管理システムに登録された従業員の打刻データ
・ 従業員のPC端末の操作ログ
<CAATsツール(ACL)利用のデータ分析>
今回の事例紹介では、従業員のPC操作ログから各出社日におけるPC操作時間を把握し、打刻データと比較する事例をご紹介します。
~ データ分析を行う上での前提条件(仮説)~
・打刻はPCを起動してから勤怠管理システム(Webシステム)を起動して実行する必要があるため、打刻データよりもPC操作ログの方が早い。
・業務開始時における準備時間や、業務終了時の片付け等から、PC操作ログのうち、打刻データの前後1時間ずつ(合計2時間)はサービス残業とはみなさない。
上記により、退勤打刻をしたにもかかわらず実際は退勤せずに仕事をしている可能性がある従業員および部署を特定し、サービス残業の改善につなげることができました。
実際の監査では、今回ご紹介した2時間という閾値を自由に入力できる仕組みや、日をまたぐ勤務時間(24:00以降のPC操作ログなど)を取り扱いながら、監査対象案件の絞込みに成功しました。
なお、労務監査では時間計算のテクニックが非常に重要となるため、合わせて下記のページもご覧いただくことをお勧めします。
【まとめ】
PC操作ログは膨大なデータとなることが多く、本件の操作ログは億単位のレコード数となりましたが、ACL™ Analyticsを利用することで問題なく処理を実行することができ、また、上記のようなCAATsを利用したデータ分析により、異常な兆候を示すレコードを効率的・効果的に絞り込んでいくことができます。リスクアプローチに基づく監査を実現したいと考えていらっしゃる方は、是非、CAATsを利用したデータ分析をご検討頂ければと思います。